創業の雑誌ブログ

聞くは究極 家族と事業承継の現場に向き合う| スリーナインコンサルティング代表・青山誠さんとこころみ代表・神山晃男の対談【第4回/全5回】

スリーナインコンサルティング株式会社は『聞く』ことで、人に寄り添い、家族や事業承継のサポートを行っている会社です。
一方、こころみが提供している社史作成サービス『創業の雑誌』では創業者へインタビューを行い原稿を作成します。インタビューでは創業者の生い立ち、学生時代、起業に至った経緯などもお伺いします。創業者の生い立ちが会社の価値観にも色濃く反映されると考えているためです。創業者、会社の価値観を引き出すために、こころみは『聞く』ことに重きを置いています。『聞く』を事業のメインに据える、スリーナインコンサルティングの青山さんとこころみの神山が『聞く』について語りあいます。今回は第4回、事業承継に第三の家族が介在する意義です。ぜひお読みください。
※2人のプロフィールは文末をご覧ください。

目次
<聞くは究極 家族と事業承継の現場に向き合う>
1回目:血はつながらないけれど、家族と向き合う存在 公開中
2回目:家族の力を信じる 公開中
3回目:価値観を知るために聞く 公開中
4回目:事業承継に第三の家族が介在する意義←今回はここ
5回目:聞くことは共有すること

 

■親の価値観、子どもの価値観


神山 お客様は中小企業の経営者の方が多いと思います。事業承継という観点で、第三の家族が介在する価値を教えてください。

青山 親子で話をしてみたけれどうまくいかないとご相談いただきます。親子で話してもうまくいかないのは、親子だからなんですよ。事業承継と言いながら、親は親の価値観を持ち出してくるし、子どもも子どもの価値観を持ち出してくるので、親子げんかのようになってしまって、経営会議にならない。それが同族での事業承継の悩ましいところです。

神山 価値観の問題なんですね。

青山 親がこの物差しを使ってやってきたから、お前も同じ物差しを使えと、子に押し付けるわけですよ。でも、子どもは子どもで、違う物差しを持ち出してくる。とはいえ価値観を共有するために、意見をぶつけ合うことは絶対やった方がいいと思いますね。

最後の落としどころは、個人の物差しではなくて、会社が将来どうあるべきかイメージを共有し、共通のゴールを作ること。新しい物差しを作り出すことですね。本来ならば、社長は会社が10年後、20年後、どうあるべきかという姿を描いてから、事業承継について考えないといけない。それをお互いの価値観を持ち出したら、話し合いにならないんですよね。

神山 それは、一般的な専門家は関わらない部分ですね。

青山 企業の顧問として入っている専門家は社長の価値観に合わせてしまいがちです。それはしょうがないですよね。一方で、子どもはそんな専門家を見て、社長の味方だから話しても無駄だと思います。

私は税理士の方に、プライベートコンサルタントを税理士の立場でやらない方がいいと伝えています。今まで社長の下でずっとやってきたのに、プライベートコンサルタントという立ち位置から発言してしまうと社長が「お前は誰の味方なんだ」となってしまいます。なので「その役割はわれわれがやりましょうか」とご提案します。「嫌われ役はわれわれがやるので、先生は普段の業務をやっていただきながら、多少アドバイスをいただければ助かります」と。

プライベートコンサルタントが入った方が、社長、子ども、顧問の先生それぞれが楽になると思っています。

神山 親子間での事業承継が難しいのは、親子の価値観が違うから、というのは納得感があります。親は子どもに同じ価値観を持ってほしいんでしょうね。

青山 子どもが親の会社を継ぐことになったとき、何が始まるかというと、親が家庭でやっていたしつけを会社内でもやってしまうんです。会社だからといって、切り替えることができない。結果、親の価値観を押し付けようとするわけです。

子どもが会社の将来を考えて意見をしても、なかなか受け入れらないですね。社長は「俺の会社だから、俺の価値観でやればいい」と無意識に思っています。だから、私からすると、親子げんかにしか見えないと伝えると驚かれますが、気づいていただけます。

神山 事業承継はビジネスの話なのに、価値観や感情を押し付けてしまうんですね。

青山 やはり人間だからだと思います。よく、お金が原因だと言いますがお金でもありません。社長が感情的になって、価値観を押し付けてくるからもめるんです。

神山 お金に対する思いが原因なわけではないですよね。

青山 私が人間と向き合うようになったのはそのためです。心の収め方が分からないともめてしまうので、そこを整えたいんですよ。

神山 整えるときに、価値観を知るところから入って、結論を出すときも交通整理に徹するんですね。

青山 そうです。最後は必ずご家族のみなさんで決めていただきます。

■会社の価値観を伝えるには

神山 プライベートコンサルタントと『創業の雑誌』の共通点として、聞くことと、価値観の話があると思いました。『創業の雑誌』には創業者である親御さんの半生を聞くことで、親御さんの価値観をひも解く過程があります。親御さんが持っている価値観が、会社の価値観のもとになっていているので、必ずお伺いしています。

後継者であるお子さんからすると、自分なりの経営に対する考え方はあるけれど、会社の成り立ちや、一番大事にしていることを知りたい、社員に伝えたいと思う。そういった理由から、『創業の雑誌』を制作いただいているというのが実感としてあります。

青山 会社の価値観は伝えていかなければなりませんよね。会社がうまくいかなくなる原因はコミュニケーション不足がほとんどです。社長が、何十年とかけて築き上げたものは、朝礼で話したくらいでは伝わりません。よく「うちの役員、従業員は、俺と同じように考えてくれないのか」とおっしゃる社長がいます。私は「社長は、頭に入っている情報から判断することができます。従業員に同じことを求めるなら、同じ情報を渡さないと考えることはできませんよ」と伝えますね。

神山 社長からしたら、見せづらいこともありますよね。

青山 気持ちは分かるのですが、一部の情報しか渡していないから、従業員もその範囲でしか動けないんですよね。

>>5回目:聞くことは共有することに続く

プロフィール

■青山誠●あおやままこと

スリーナインコンサルティング株式会社代表取締役・プライベートコンサルタント
名古屋市出身。「お客様の人生」という時間軸をコンサルティングの切り口に法務・税務など超越したプライベートコンサルティングを確立。さまざまな人生経験で培った圧倒的な傾聴力・会話力でお客様の心をグリップ。家族カウンセリングをベースとする独自のコンサルティングスタイルは、『第三者』ではなく『第三の家族』として資産・事業承継対策に悩むお客様に寄り添い続けます。
生保営業パーソン向け営業支援・士業向けコンサルティング支援を得意とする。セミナー・研修はエンド向け・プロ向け共に分かりやすくかつ「実践できる!」と好評を得ている。
生命保険募集代理人資格(一般課程・専門課程・変額保険販売資格・外貨建保険販売資格) (社)信託協会 信託業務研修・信託関連法令研修修了。司法書士法人みつ葉グループ コンサルティング推進室室長、「再婚信託」「ジィジとバァバのお孫さん応援信託」「隠居信託」は商標登録済み。

■神山晃男●かみやま あきお

株式会社こころみ代表取締役社長
1978年長野県生まれ。慶應義塾大学卒業後、コンサルティング会社勤務を経て、投資ファンドのアドバンテッジパートナーズに10年間勤務。コメダ珈琲店、ウイングアーク1st等を担当。2013年「全ての孤独と孤立なくす」ことを目的に株式会社こころみを設立。一人暮らし高齢者向け会話サービス「つながりプラス」、親のための自分史作成サービス「親の雑誌」やインタビュー社史作成サービス「創業の雑誌」を提供する。
「聞き上手」を軸にした企業支援も行い、業務可視化や業務改善・組織改革支援、事業承継支援を提供中。
株式会社ヒューマンエナジー代表取締役、株式会社イノダコーヒ取締役、NPO 法人カタリバ監事、医療AI推進機構株式会社 監査役、株式会社テレノイドケア顧問。
 

投稿日:2024年05月13日