教えてください!家族承継って何ですか?|「家族承継」の専門家に聞いてみました(第5回/全5回)
株式会社こころみは、株式会社Kamakura Kazokuと提携させていただいております。
株式会社Kamakura Kazokuは、家族視点の事業承継「家族承継」専門の会社です。対話を通じて経営者と経営者家族をつなぎ、本音で話せるような場を提供し、創業者の志を次世代に継承させるサポートを行っています。
こころみが提供しているインタビュー社史作成サービス『創業の雑誌』が、家族承継を行う上で大切なツールとなるということから提携に至りました。そんな「家族承継」の専門家である株式会社Kamakura Kazokuの関尚子さん、関清一郎さんに事業承継のひとつである「家族承継」、『創業の雑誌』が「家族承継」に果たせる役割などをお伺いしてみました。
<目次>教えてください!家族承継って何ですか?|「家族承継」の専門家に聞いてみました
第1回:ファミリービジネスには対話が足りていない?
第2回:原体験を言葉として残せる社史作成サービス『創業の雑誌』
第3回:ファミリーチームとビジネスチームをつなぐ家族憲章
第4回:事業承継は、早ければ早いほどいい
第5回:Kamakura Kazokuが目指すもの(←今回はココ)
――お2人の目指しているものを教えてください。
清一郎 私達の大義として、「次世代によりよい未来を残したい」ということがあります。子どもも3人いますし、その先の世代もありますので。次世代によりよい未来を残すというのは、たくさんの選択肢を残してあげるということだと思っています。もちろん、自分の子どもだけじゃなくて、自分の仲間たち家族に対しても同じように思っています。「kazokuの家族は、みんな家族」です。
稲盛和夫さんが物心両面の幸福とおっしゃっていますが、物質的な幸せと共に、心の幸せも絶対に大事なことなんです。だから僕らは承継において、家族やふるさと地域という、あたたかくて、心の平穏や幸せにつながるようなものを選択肢として残したい。それが、家族承継という言葉だと思います。その家族承継を行う上で『創業の雑誌』は必要なものです。
尚子 絶対に、必要ですね。
清一郎 僕らが、自分ごととして『創業の雑誌』をご紹介できるのも、絶対に必要だと思っているからなんですよ。
尚子 受け継いでいくといいますけど、自分が考える中でもいいものや、心が温まるものを次世代に残しておきたいですよね。そのために、言葉にすることが大切だと思うのです。やっぱり、言葉にしないと伝わらないのですよ。今の時代、背中で見て学ぶというのも、難しい話なので、それを言葉にして繋いでいきたいです。
私たちの親世代までは、言葉にすることに抵抗がある世代だったと思います。なので、言葉にするのを助けていただくのがこころみさん、言葉を使って対話を促進するのがkamakura kazokuなのだと思います。
――お2人にとって、あたたかさとは何でしょうか?
尚子 私にとっては、思いやりですかね。相手のことを思って何かをしてあげたいと思ってやって、それが相手と通じ合ったときに、あたたかいなって思いますね。よかれと思ってやったことが、相手にはそうじゃないことってあるじゃないですか。なので、相手のことを理解して観察した上で、相手を思い行動する。その結果、思いが通じ合ったときに、あたたかいと思います。
清一郎 僕は、つながりというワードを大事にしています。ハーバード大学の研究でも、幸せに生きていく、健康で生きていく人たちは「人とのつながりを大切にしている」という研究結果が出ているのです。さらにいえば、幸せが続いていくのは、血の通ったつながり、有機的なつながりが大事だと思うのです。
ビジネスにおいては、お金でつながるつながり方もあると思います。役員報酬をいくらにするからうちの会社で働いてほしいとか、ありますよね。でもそれって、長くは続かないと思うのです。お金は生きていく上ではもちろん大事ですが、それにプラスして、強さと優しさも大事だと思っています。伊那食品の塚越英弘氏は、「いい会社を作りましょう、たくましくそして優しく」とおっしゃっているんですけれども、組織も、たくまさしさと優しさが大切なのですよね。
やっぱり冷たいのは嫌なのです。私自身が以前、お金を稼がなければと頑張っていたときに、どんどん自分が冷たくなっていく感じがして。それこそ、道端で座っていらっしゃる年配の方がいても、ちょっとアポイントがあるから、と通り過ぎてしまうとか。子どもたちが泣いていても、今は忙しいからと放っておいたりですね。
物質的豊かさを得ないと、人生も豊かにならないと思ってそんな働き方をしていたのですけど、人生パートナーの妻に全否定され、目が覚めました。
尚子 もちろん、一生懸命働いてくれたことに、感謝もしていますよ(笑)。
清一郎 今は理解しています。そうじゃないのだって。やっぱり、家族を犠牲にしてお金を得るっていうのは、あまり楽しくないのですよね。ワクワクしないのです。そういう意味では、優しさとか愛情とかを大事にしたあたたかい社会って、これからますます必要になってくると思います。
特に日本は、これから人口がどんどん減って、経済成長も難しくなる。普通に考えたら、余裕のない社会になっていくと思うのです。そのとき子どもたちに、「なんでお父さんお母さんはこんなつめたい社会にしちゃったの?」と絶対に言われたくないのですよ。
尚子 うんうん。言われたくないですね。
清一郎 微力でも、そういう社会にならないようにママとパパは抗ったと、自分が死ぬときに子どもたちに思ってもらいたい。そのためには、人の温もりやつながりとか、そういうあたたかいものが、大事だと思うのですよね。そしてそこで『創業の雑誌』が大きな力を発揮する。
初めて『創業の雑誌』を読んだとき、「どんな会社が作ったのだろう?」ってとても気になったのです。こんな話を聞き出す人たちがいるのだと。僕は、その雑誌を作った創業者の方といろいろとお仕事をさせていただいていましたけど、知らないことばかりでした。『創業の雑誌』を読んで初めて、そういうことを背負ってやってらっしゃるのだ、と思いましたね。
尚子 自分からは言えないことですよね。
清一郎 そうなのです。例えば、承継を終えられた、ある経営者の方はとにかく協力的でした。「家族を大切にして承継してほしい」っておっしゃって、講師として登壇してくださったり、ほぼボランティアみたいなことまでやってくださったんです。この方は、どうしてここまでやってくださるのだろうと思っていたのですが、『創業の雑誌』を読んで腑に落ちました。「こういう大変な過去があったから、この方は、本気で承継に向き合ってくださっていたのだな」とわかりました。
『創業の雑誌』があると、将来この方に万が一があった場合にものこされたご家族と精神的につながっていられると思います。こうした仕組みが、世の中にどんどん増えていってほしいです。僕はたぶん、10年後も『創業の雑誌』をいろんな人に紹介していると思いますね。こういうあたたかい世界を、次世代に残してあげたいです。
■プロフィール
関尚子(せきなおこ):株式会社kamakura kazoku代表取締役CEO
神奈川県出身。2004年明治大学政治経済学部卒業。同年横浜銀行入行。 綱島、日吉、本店営業部などに所属し、家族向け相談業務に10年携わる。 育児3人介護2人に向き合うため、退職。家族か仕事ではなく、すべてを一体化できるような生き方をしたい、 また、元経営者の一人娘としての原体験を形にしたいと家族で対話を重ね、起業を決意。神奈川県の起業家創出拠点HATSU鎌倉の起業支援プログラムに採択され、2020年12月夫婦で起業。
関清一郎(せきせいいちろう):株式会社kamakura kazoku代表取締役CHO
広島県出身。2006年横浜国立大学経営学部卒業。同年横浜銀行入行。税理士法人山田&パートナーズ出向を経て、2016年青山財産ネットワークスに入社。日本M&Aセンターとの合弁会社事業承継ナビゲーターにて、事業承継後の経営者・家族向け相談業務の責任者を務める。
一般社団法人金融財政事情研究会が、 株式会社日本M&Aセンターおよび株式会社きんざいと創設した認定制度「事業承継シニアエキスパート認定資格」の講師やファシリテーターとしても活躍する。
投稿日:2023年06月07日